blog:本のあるところに人が来てもらうのではなく、人のいるところへ本を持っていく。

2016年10月6日、JR京都駅のすぐそばにオープンした、ワコールスタディホール京都に行ってきました。

同ホールは女性用下着などで知られるワコールが設置するスクール、ライブラリー、コワーキングスペース、ギャラリー等からなる複合型文化施設で、美的好奇心を刺激して、感性・知性の面からも女性に美しくなってもらうことを目指して作られたそうです。

この日は、オープン初日の夜の公演である「新しい本のトビラを開く ~ワコールスタディホール京都の、ぐっとくる20冊~」に参加してきました。

講師は、ワコールスタディホール京都のライブラリーの選書を担当した、有限会社BACH代表・幅允孝氏です。
お話の前半は、幅氏の仕事について、ワコールスタディホール京都のライブラリーのコンセプトなどについてお話しいただき、後半はライブラリーの中から幅氏のお気に入りの20冊をピックアップして紹介いただく内容でした。

後半では色々な面白い本、読んでみたくなる本をたくさんご紹介いただき、もちろん楽しかったのですが、前半の幅氏のお仕事の話は更に興味深く勉強になる内容でした。

僕がこの公演に参加したのは、写真集というもの、つまりブック形式での写真の見せ方についてきっと学べることがあるだろうと期待してのことでした。

前半のお話の中では、幅氏が書店員時代に担当コーナーの本が売れるために工夫したこと、Amazonが台頭する中で、いかに書店に来てもらうか、滞留時間を長くするか、本を手にとってもらうか、本に興味が無い人が、本に出会うきっかけをどのように作り出すのか、など、「本」をそのまま「写真」に置き換えて学べる大変有意義なお話でした。
テキストにしても写真にしても、今ではどのような端末で表示しても適切に表示されるような柔軟性が与えられ、その外形と言うか、モノらしさが大変希薄になっていると思いますが、それは情報としての純度と引き換えに、五感で体験する知や美というものを失うことと言えると思います。

ひとびとはいつでもどこでも情報を検索し利用することができますが、反面既知のものしか買わないという現象が起こっています。それはつまり、購買行為の中から「出会い」や「体験」という要素が抜け落ちてしまっているということでは無いでしょうか。

誰もが時間に追われている(と思い込んでいる)現代社会の中で、本が好きなひとにも本に興味の無い人にも、これまで知らなかった面白い本に出会い、手に取り、ページをめくり、購入を決意するという体験を生み出すために、いかに滞留時間を作り出すか。これは大変興味深いテーマです。

お話は予定時間を超えて盛り上がり、最後は参加者が皆紹介された本を手にとって体験しました。

幅氏のお話は大変面白く、紹介された本も興味深いものばかり、そしてワコールスタディホールの洗練された学習空間も大変居心地のよい、美的好奇心をくすぐるものでした。

写真に置き換えて考えますと、一方では誰もが気軽に写真体験ができるようになりました。

スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末のカメラ、コンデジ、ミラーレス、一眼レフと呼ばれるような高価なカメラを持っているひとはたくさんいます。昔のように難しいフィルムを扱う必要が無いし、撮ってすぐに写真を見ることができ、モバイル端末やパソコンに転送して画像として個人で楽しむことも、ネットワーク上で共有することもできます。

しかしこれは未知の写真体験と言えるでしょうか?既知の写真体験を共有しているに過ぎないのでは無いでしょうか?

もう一方では、依然として写真に全く興味が無いひとびともいます。

学校行事や会社の行事、冠婚葬祭などで以前から写真体験というものはありました。前述した写真体験の普及によって、身の回りのカメラの数は膨大に増えたはずですが、それでも写真を撮られることに興味の無いひとは依然としています。

どちらにも欠けているのは、「これまで知らなかった、意識しなかった、興味の無かったことに出会う、体験する、それを(購入するなどして)手に入れる」という要素ではないかと考えました。

ブログのタイトルにもした「本のあるところに人が来てもらうのではなく、人のいるところへ本を持っていく。」は幅氏の言葉ですが、僕は写真家として、写真のあるとこに人が来てもらうのではなく、人のいるところに写真を持っていく活動をしなければいけないのだな、と思いました。

また、写真に興味が無いひとに、写真を体験する機会を提供することも大事であると思います。今、定期的にグループシューティングの機会を作って、初めて写真を撮られることを体験しに来てもらったり、友だちを連れてきてもらったりして、写真を体験する機会創出を目論んでいます。

現在はまだ写真を撮られることに既にいくらか興味を持っているひとが集まってくれている感じですが、ここから更に回数を重ねながら、色々な世代の、色々な文化圏のひとびとに参加してもらって、写真体験とともに、新しいひとと知り合う機会を生み出していきたいと考えています。
むすびに、幅氏のお話を聞いた記念に、ワコールスタディホール京都の1日無料券を頂戴したので、近いうちにまた行ってみようと思います。ライブラリーにはファッション関係の入手が困難そうな大判の写真集などがセレクトされており、興味深く勉強できると思われます。
ワコールスタディホール京都: http://www.wacoal.jp/studyhall/

有限会社BACH: http://www.bach-inc.com/
Masafumi Nakanishi peosonal works

Group shot: https://masafumi.myportfolio.com/incolor09302016

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