「岡本太郎とアール・ブリュット ー 生の芸術の地平」展に行ってきました

岡本太郎美術館で開催中の「岡本太郎とアール・ブリュット ー 生の芸術の地平」展に行ってきました。美術家の作品ではなく、美術の専門教育を受けていない者による独自の様式を持った作品が集められており、とても楽しめる内容だったのでここに紹介したいと思います。
常設展や周囲の環境も含めて楽しめる展覧会だったので、足を運ぶ価値のあるものだと思います。

我々を根源的な感動に回帰させる異常な魅力

岡本太郎は1950年の著作「アヴァンギャルド藝術」の中で、「子どもの絵」「精神障害者の絵」「民族資料」を取り上げて、“彼らは論理的に明らかに矛盾していること、例えば、自分が自分であると同時に兔であるとか、雲であるというような、あり得べからずことを平気で信じていたり、夢で見た世界と現実の世界とを矛盾のままごちゃまぜにしてともに実在だと考えたりします。彼らの表現はノーマルな社会の分別では到底考えられない、恐ろしい程の激しさを持っているのです。それはかえって我々を根源的な感動に回帰させる以上な魅力です”と述べている。
本展覧会では、美術の専門教育を受けていなくても、独自の表現で自分の表現を築いた表現者たちを「アール・ブリュット(生の芸術)」と捉えて、その様々な作品を紹介している。
(展覧会紹介文より)

まことさん

展覧会は、美術の専門教育を受けていない表現者たちの作品、すなわち「原住民たちの作品」「精神障害者たちの作品」「民芸職人による作品」「ワークショップ参加者(子どもたち)による作品」で構成されている。

最初に展示されている呪術的なブルキナファソの仮面、色鮮やかなティンガティンガ絵画は、岡本太郎の言うところの人間の自我と、自然界、精神世界が一体であることの表現であって、おどろおどろしく表現は荒削りだが、根源的な感動を想起させるプリミティブなパワーに満ちている。

続いて、展覧会の中心的な内容になる精神障害者たちの作品郡。これは、日本各地の精神障害者たちの集うアトリエから集められたもので、これまでもそれぞれが作品展や図録の出版を通じて紹介されてきたものであるが、今回展覧会において相当ボリュームの作品が集まっており、非常に見応えがある。その中で特に印象に残った作家を紹介したいと思う。

  • 鎌江一美(やまなみ工房、滋賀県)
    鎌江一美の作品は陶土による。表面には米粒のように丸めた陶土がびっしり敷き詰められており、その強烈なテクスチャーと、想像される常軌を逸した集中力が途方も無い印象を与える。
    彼女の作品のモチーフは所属するやまなみ工房の長「まことさん」であり、彼への尊敬、恋慕、彼から承認されたいという欲求、つまり「まことさん」への愛が作品作りのモチベーションだという。

  • 杉浦公治(工房集、埼玉県川口市)
    杉浦公治は4角を切り落とした段ボールに、マーカーで様々な商品名、案内表示、キャッチコピーなどをびっしりしきつめる。
    モチーフの選択に脈絡があるのかは不明だが、膨大な作品群は言葉の意味を超えて魔術的なサイン、シンボルのようでもあり、宝箱に集められた色とりどりのおはじきのようでもあった。

彼らの作品は美術の専門教育の中で培われたものではなく、表現したいという欲求から生まれているのかもわからない。作品から感じるのは、圧倒的な集中力であり、原住民の作品から感じるパワーに酷似している。の一連の作品群は本当に強烈なので、美術を志す者もそうでない者も、是非足を運んで体験してほしいところである。

美術の専門教育を受けていない者の作品として、民芸品も紹介されている。フィリピンのブリキや空き缶で作られたおもちゃ、ガーナの様々な形態の棺桶などだ。これらは各地域の民芸職人たちによって研究され、独自の表現様式を確立している。

最後の展示スペースでは、会期中毎日開催されるワークショップで制作された仮面や顔の絵が展示されている。これこそ真に美術の専門教育を受けていない者たちの作品群であり、それまでの展示から受けた刺激や、もともと持っていた表現したいという欲求、それらが展覧会の場で相乗的に生み出すパワーが発現している。展覧会がその場に固定されたものではなく、その場と作品と人々を通じるパワーの流れであるかのようである。

岡本太郎美術館について

常設展示は岡本太郎の作品群のほか、彼の出生や生涯についても紹介されていて、岡本太郎を知っている人も、知らないひとも楽しめる内容である。普通の美術館のように広いスペースに適度な照明によって展示されているのではなく、迷路のように入り組んだ施設内に作品がぎっしり詰まっているという印象である。
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美術館は都心から少し離れた神奈川県川崎市、生田緑地の奥に位置し、緑に囲まれた好環境の中で、山道の散策や蛍の鑑賞なども楽しめる。
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川崎市制90周年記念事業「岡本太郎とアール・ブリュット ー 生の芸術の地平」展
2014年7月19日〜10月5日
川崎市岡本太郎美術館
川崎市多摩区枡形7-1-5
http://www.taromuseum.jp/

鎌江一美 http://a-yamanami.jp/artists/artists09.html
杉浦公治 http://kobo-syu.com/artist/sugiura.html

Masafumi_Nakanishi

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