月別アーカイブ: 2014年8月

「岡本太郎とアール・ブリュット ー 生の芸術の地平」展に行ってきました

岡本太郎美術館で開催中の「岡本太郎とアール・ブリュット ー 生の芸術の地平」展に行ってきました。美術家の作品ではなく、美術の専門教育を受けていない者による独自の様式を持った作品が集められており、とても楽しめる内容だったのでここに紹介したいと思います。
常設展や周囲の環境も含めて楽しめる展覧会だったので、足を運ぶ価値のあるものだと思います。

我々を根源的な感動に回帰させる異常な魅力

岡本太郎は1950年の著作「アヴァンギャルド藝術」の中で、「子どもの絵」「精神障害者の絵」「民族資料」を取り上げて、“彼らは論理的に明らかに矛盾していること、例えば、自分が自分であると同時に兔であるとか、雲であるというような、あり得べからずことを平気で信じていたり、夢で見た世界と現実の世界とを矛盾のままごちゃまぜにしてともに実在だと考えたりします。彼らの表現はノーマルな社会の分別では到底考えられない、恐ろしい程の激しさを持っているのです。それはかえって我々を根源的な感動に回帰させる以上な魅力です”と述べている。
本展覧会では、美術の専門教育を受けていなくても、独自の表現で自分の表現を築いた表現者たちを「アール・ブリュット(生の芸術)」と捉えて、その様々な作品を紹介している。
(展覧会紹介文より)

まことさん

展覧会は、美術の専門教育を受けていない表現者たちの作品、すなわち「原住民たちの作品」「精神障害者たちの作品」「民芸職人による作品」「ワークショップ参加者(子どもたち)による作品」で構成されている。

最初に展示されている呪術的なブルキナファソの仮面、色鮮やかなティンガティンガ絵画は、岡本太郎の言うところの人間の自我と、自然界、精神世界が一体であることの表現であって、おどろおどろしく表現は荒削りだが、根源的な感動を想起させるプリミティブなパワーに満ちている。

続いて、展覧会の中心的な内容になる精神障害者たちの作品郡。これは、日本各地の精神障害者たちの集うアトリエから集められたもので、これまでもそれぞれが作品展や図録の出版を通じて紹介されてきたものであるが、今回展覧会において相当ボリュームの作品が集まっており、非常に見応えがある。その中で特に印象に残った作家を紹介したいと思う。

  • 鎌江一美(やまなみ工房、滋賀県)
    鎌江一美の作品は陶土による。表面には米粒のように丸めた陶土がびっしり敷き詰められており、その強烈なテクスチャーと、想像される常軌を逸した集中力が途方も無い印象を与える。
    彼女の作品のモチーフは所属するやまなみ工房の長「まことさん」であり、彼への尊敬、恋慕、彼から承認されたいという欲求、つまり「まことさん」への愛が作品作りのモチベーションだという。

  • 杉浦公治(工房集、埼玉県川口市)
    杉浦公治は4角を切り落とした段ボールに、マーカーで様々な商品名、案内表示、キャッチコピーなどをびっしりしきつめる。
    モチーフの選択に脈絡があるのかは不明だが、膨大な作品群は言葉の意味を超えて魔術的なサイン、シンボルのようでもあり、宝箱に集められた色とりどりのおはじきのようでもあった。

彼らの作品は美術の専門教育の中で培われたものではなく、表現したいという欲求から生まれているのかもわからない。作品から感じるのは、圧倒的な集中力であり、原住民の作品から感じるパワーに酷似している。の一連の作品群は本当に強烈なので、美術を志す者もそうでない者も、是非足を運んで体験してほしいところである。

美術の専門教育を受けていない者の作品として、民芸品も紹介されている。フィリピンのブリキや空き缶で作られたおもちゃ、ガーナの様々な形態の棺桶などだ。これらは各地域の民芸職人たちによって研究され、独自の表現様式を確立している。

最後の展示スペースでは、会期中毎日開催されるワークショップで制作された仮面や顔の絵が展示されている。これこそ真に美術の専門教育を受けていない者たちの作品群であり、それまでの展示から受けた刺激や、もともと持っていた表現したいという欲求、それらが展覧会の場で相乗的に生み出すパワーが発現している。展覧会がその場に固定されたものではなく、その場と作品と人々を通じるパワーの流れであるかのようである。

岡本太郎美術館について

常設展示は岡本太郎の作品群のほか、彼の出生や生涯についても紹介されていて、岡本太郎を知っている人も、知らないひとも楽しめる内容である。普通の美術館のように広いスペースに適度な照明によって展示されているのではなく、迷路のように入り組んだ施設内に作品がぎっしり詰まっているという印象である。
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美術館は都心から少し離れた神奈川県川崎市、生田緑地の奥に位置し、緑に囲まれた好環境の中で、山道の散策や蛍の鑑賞なども楽しめる。
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川崎市制90周年記念事業「岡本太郎とアール・ブリュット ー 生の芸術の地平」展
2014年7月19日〜10月5日
川崎市岡本太郎美術館
川崎市多摩区枡形7-1-5
http://www.taromuseum.jp/

鎌江一美 http://a-yamanami.jp/artists/artists09.html
杉浦公治 http://kobo-syu.com/artist/sugiura.html

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「メンヘラ展2」に行ってきました。

「メンヘラ」とは、インターネット辞典のニコニコ大百科によると、「2チャンネルのメンタルヘルス板にいるような人を指すネットスラング」であり、医学的な意味での「メンタルヘルスに問題を抱える人」とは別の概念である。
「メンタルヘルスに問題を抱える人で、かつ2チャンネルのメンタルヘルス板にいるような人」という解釈と、「2チャンネルにいるような人で、メンタルヘルスに問題を抱える人を含む」という解釈の両面性を持ち、SNS上などでひとつのカルチャーを形成しており、ライフスタイルと言うこともできる。

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このメンヘラ展は、そのようなメンヘラたちが集まって何かを発信していこうという動機で発足しているそうで、展覧会と言うよりむしろ、アートにより集い、社会へのチャンネルを開いていこうとする活動であって、感覚的には所謂オフ会やコスプレイヤーやアマチュアモデルの撮影会などのニュアンスに近い印象を受けた。
実際に、会場では在廊作家がその場で作品を追加したり、作家同士や来場者との交流が盛んに行われる有機的な内容であった。
今回がメンヘラ展というタイトルのもとに行われた2回目の展覧会であるとのことだが、会を重ねていけばメンヘラというカルチャーの社会的認知に一役買うことであろう。同時に、ファッション性や大衆化が問題となり、物議を醸すことになるだろう。

展示作品は一様にアウトサイダーアート風で、インモラルでナンセンスな様式であった。
中でも多摩美術大学に在学中であるというナカバヤシアリサという作家の水彩に色彩・フォルムの表情があり、光っていた。

メンヘラ展2
https://61749a6c3fa896154961fda45f8420a09ea03e3b.googledrive.com/host/0B5xrKP8tWBoMaDFuRU94QkhyMU0/
渋谷ギャラリールデコ5
〒150-0002東京都渋谷区渋谷3-16-3 ルデコビル5F
2014年8月12日(火)〜17日(日)

Masafumi Nakanishi

「伊藤若冲の名宝展」に行ってきました

足利将軍所縁の禅寺、臨済宗相国寺派大本山であり、京都五山第2位に列せられる相国寺境内に位置する承天閣美術館にて開催中の「伊藤若冲の名宝展」に行ってまいりました。
伊藤若冲は相国寺の梅荘顕常(大典禅師)に師事して禅に傾倒し、また支援を受けて様々な名品を相国寺の他、鹿苑寺(金閣寺)等に残しました。
本展はそれらの作品を中心に構成された展覧会です。
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伊藤若冲は江戸時代の絵師で、色鮮やかな花鳥画やモザイク画のような鳥獣画が有名ですが、水墨画においても独自の作風を確立した名品が多くあり、今回展覧会でも多く取り上げられています。
普通、水墨画は墨の柔らかいグラデーションを駆使し、幽玄的で叙情的な表現をされますが、若冲の水墨画は濃墨、中墨、淡墨の3色で大胆に構成され、濃〜淡へと混じり合う階調が見られないことが特徴的です。
筆のタッチはスピード感があり、たっぷりと墨を含んだふくよかな線、かすれた線、筆跡による質感表現などはデザイン的で洗練されています。
描かれている人や動物たちはどれもみな非常にひょうきんで人懐っこい表情、動作をしており、これも若冲の水墨画の特徴と言えるでしょう。
特に気に入ったのは「郡鶏蔬菜図押絵貼屏風」で、六曲一双の屏風に鶏と野菜が描かれています。
若冲の生家は青物問屋で、庭に何十匹もの鶏を飼い写実の練習をしたと言います。鶏たちは今にも動き出しそうな生き生きとした表情で描かれ、若冲が鶏をつぶさに観察し、また愛情を持って描いたのであろうことが伝わってきました。

常設展示としては鹿苑寺(金閣寺)の大書院から写された50面に渡る障壁画(襖絵)や、色彩鮮やかな釈迦三尊増などが有名です。

相国寺には京都から地下鉄烏丸線今出川駅で下車、徒歩5分程度の距離です。敷地を同志社大学と隣り合わせています。
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承天閣美術館は相国寺境内にあります。境内は美しく整備されています。
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館内には履き物を脱いで上がることになりますので、お出かけの際はご留意下さい。
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すぐ南側には京都御所があります。建物内の観覧は事前申込みをするか特別観覧時でないとできませんが、広々とした園内をぶらっと散歩するだけでも楽しいですよ。
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伊藤若冲の名宝展 – 相国寺 金閣寺 銀閣寺所蔵
http://www.shokoku-ji.jp/j_now.html
相国寺承天閣美術館
〒602-0898京都市上京区今出川通烏丸東入
2014年6月15日(日)〜9月23日(火)
10:00〜17:00(入館は16:30まで)

Masafumi Nakanishi